謙称(けんしょう)とは、雅号の後に付けられるその人の属性を示す言葉です。
また、時には自身をへりくだって言う言葉にもなり、より作品に雅やかさを与える言葉でもあります。
例えば、トップ画像の頼山陽の字は「山陽外史」と書いています。
このように「名前や雅号+謙称」という順に記します。
ちなみに「外史」は詩・歌・文章を書く民間人を意味します。
実際、彼は漢学者であるとともに、詩人であり、物書きでした。
謙称一覧
道人 | 何かの道を極めようとする人。 教養のある人。 仏教・道教の修行者。 |
頑民 | 頑固な人。 |
学人 | 勉強している人。 |
野人・野史・野叟 | 気ままに暮らす人。 飾り気のない人。 無骨な人。 |
野人・叟・癡叟(ちそう) | 田舎の人。 |
迂人(うじん)・迂史・迂叟 | 世の中のことに疎い人。 |
逸人(いつじん)・逸史(いっし)・逸民・隠史・隠士・草衣 | 隠居した人。 世の中から距離を置き過ごす人。 |
漁史・漁子・釣人・釣徒・釣客 | 田舎の海辺に住む人。 「釣」を含むものは海辺に住んでいなくても釣りをする人は当てはまる。 |
山人・山民・山客・仙史・幽人・樵客・樵夫・樵人・樵叟 | 田舎の山に住む人。山に隠居した人。 |
幽人・幽客 | 人の少ないところで静かに暮らす人。 |
閑人・間人・陳人 | 退職し、ゆっくり暮らす人。暇な人。 |
散人・散史・散士・外史 | 詩・歌・文章を書く人で、公務員ではない人。 世の中に振り回されない人。 |
居士(こじ)・処士(しょし) | 学徳があるが、公務員ではない人。 居士は自宅で修行をする仏教徒も指す。 |
田翁(でんおう)・田叟 | 田園に暮らす老人。 |
漁翁 | 海辺に暮らす老人。 |
布衣(ほい) | 官位のない人。 |
あなたに最も当てはまるのはどれでしょうか?
これらはシャレて使うものなので、ガチガチに決め込まなくてOKです。
「田舎の山に住んでないけど岡”山”住みだから仙史を使おう」などそれくらいでも大丈夫です。
注意点・補足
「叟」(そう)「翁」は老人を指すので、当てはまるかどうか気を付けましょう。
「樵」(しょう)は木こりの意味がありますが、木こりでなくても使えます。
「客」の読みは全て「かく」です。
「布衣」は官位のない現代では本当はマッチしないですが、「私は平社員です」という謙称として使ってもいいと思います。
「人」「士」「史」「客」「民」は大差なく人を示します。字面や好みで選んでよいでしょう。
字そのものには
「士」は男性、学や徳がある人
「史」は役人、学問の人、教養があり社会的活動をする女性
「客」は何かに長けた人、旅人、訪問者
「民」は一般人、特別な位がない人
などの意味も含まれますが、「外史」は役人を示しませんし、男性の頼山陽が使っていたりとあまり気にしなくてOKです。
参考文献
落款の疑問100 「墨」編集部・編
落款の手びき 細谷恵志著
漢字条幅ハンドブック 有岡俊崖著
特に「落款の疑問100」は落款の気になることをQ&A方式でまとめられており、言葉も平易で読みやすくオススメです。
また、雅号についてはこちらにまとめています。よければご覧ください。
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