今回はVRchatの、なみしろさんのワールド「MIMICIRO」に展示いただいた書に関わるちょっとしたコラムを記します。また各種イベントの様子も掲載しています。
三行書について
上に表示されている7月の書の書体は草書をメインとした行草体という書体です。
こういった三行書は書の世界では明・清の時代頃から流行し始めます。
(明:1368~1644年・清:1644~1912年)
この時代頃からようやく芸術としての書が作られ評価されるようになったことが、三行書が流行する背景として挙げられます。
それ以前の名品とされる書は、誰かの功績を称えるために書いた碑文や、手紙や記録のためなど、実用が目的でした。
ですから正確さが求められます。文字が整った形であること、決められた書式など制約の上で書かれるケースが多かったのです。
美しく書かれた字に芸術的な魅力を見出し、評価されることもありましたが、今日のような「作品」としての目的で作られることは少なかったのです。
また明・清時代に行草体×縦長の紙という様式が流行りました。
行草体は強い縦の流れを持っており、縦長の紙と相性が良いです。
「明・清」は作品としての書がよく書かれるようになったと前述しましたが、「宋」の時代にも自分らしさを書に投影していく流れは色濃く出始めてました。
しかし作品としてではなく、手紙などで書かれたものが多かったのです。
時代性
書は時代を色濃く反映します。
例えば日本でも江戸時代には歌舞伎が流行し、看板の文字が遠目でもよく見えるように太く強調された字の勘亭流が出てきました。いわば商業のために生まれた当時のポップ体です。
明治維新以降はひらがな50音が制定され、変体仮名は使われなくなります。
その流れで、漢字かな交じりの書という書に馴染みのない人でもおおよそ読めるジャンルが新しく出来ました。
時代と道具
時代が代われば道具も変わります。
例えば、現在では入手が難しくなったものもあります。
まずは硯。端渓(たんけい)と呼ばれる場所で採れる石の中でも老坑(ろうこう)のものは、墨を磨ったときの粒子が細かく、艶やかで伸びがよく、墨色が美しいと言われます。
その石も今では採れなくなり、老坑の中でも質のいい硯は非常に高値で売買されています。
紙も機械漉きの台頭や、需要の低下により手漉きの職人さんが減りました。
それにより良質な紙は非常に高価になっています。
しかし、大昔に比べれば十分に恵まれた環境にあります。
平安時代には大きな紙を作ったり、大量生産する製紙技術はありませんでしたし、その紙に合う小筆サイズの筆を使うことが当たり前でした。
今では多様な大きさの紙、筆など道具の選択肢は多岐にわたります。
筆に使っている動物の毛の質が、以前に比べて悪くなってきていると聞きます。(全てがではないと思いますが)
知らず知らずのうちに小さくなっているスナック菓子のようですね。違うか。
現代
新しく得られた物も大きいです。
特にインターネットの普及。書の知識や道具も格段に集めやすくなりました。
またアプリや、VRなど、筆墨硯紙を使わない手段も出てきました。
以前から、墨に混ぜ物をしたり、筆や紙以外のものを使って書かれることはありましたが、更に大きな変化と言えるでしょう。
今回の私の書はVR上で展示していただくことを想定して書いています。
比較的大きなサイズに見えると思います。聯落ち(れんおち)と呼ばれるサイズに近いように見えます。53×136cmが聯落ちの大きさです。
実はこれ、小筆で書いたものなので、縦が30cm強くらいの大きさなんです。
実物より小さく出力されることは、本および写真等でありましたが、実物より大きく出力されることは稀だったと思います。
この時代に生きていなかったら私も違う字を書いていたでしょう。
逆に言うと、空海も令和に生きていたら違った字を書いていたり、ひょっとするとyoutuberをしているかもしれないですね。
直近のイベントの様子
3つのイベントを行いましたので、その風景をご紹介します。
次回VRchatイベントのお知らせ
次回のイベント「VRC書道教室」は8/19(金)22:00〜22:45です。
「氷菓」を篆書で書きます。Bokkeiをフレンド登録の上、当日Joinでご参加いただけます。
Quest対応、定員12名です。
書いたことがない人も多いであろう篆書を体験してみましょう!
お待ちしてま~す!
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